残酷な少女たち・前編

ティエル「ありがとうございましたっ」

とある町の商店街の一角。

わたしはそこで花屋を営んでいます。

まだちっちゃいのに大変でしょうとかよく言われるけど……お花が好きだから、大変なことなんて何もないです。

ずっとお花に囲まれて一生を過ごして、世界中をお花で一杯にするのがわたしの夢なんです。

本当は、それでもぜんぜん構わなかったんですけど。

でも……出会っちゃいましたから。

「その子」にわたしが始めて気付いたのは、休日の昼下がりでした。

ここの商店街は、休日だけ歩行者天国になります。

沢山の人が行き交う中で、向こうの通りからこっちをじっと見つめている女の子がいました。

フリルのたくさん付いた服を着た、桃色の髪がきれいな女の子です。

いつからいたのかは判りません。でも、その子はじっとこっちを見つめていて……わたしと目が合っても、ずっと見続けていました。

ティエル「………………」

少女「………………」

………………………………

客「お嬢ちゃん、お花貰えるかい?」

ティエル「あっ! は、はいっ!」

そんなふうにお店を切り盛りしている間も、彼女はずっとこっちを見つめ続けていました。

何を考えているのか、わたしには判りません。

彼女の瞳からは、何も読み取ることができませんでした。

それから、夜になって、店じまいを始めたころ……ようやく彼女がこちらに近づいてきました。

少しドキッとしましたけど、別に怖かったからじゃないように感じます。

そうして、お店の前まで来た彼女を出迎えて、そして……。

少女「………………」

ティエル「………………」

……………………………………

…………な、何なんでしょう。

相手がまったく口を開く気配を見せないので、仕方なくこっちから話しかけることにします。

……けっこうビクビクです。

ティエル「あ、あのぉ……」

少女「……名前」

ティエル「へ?」

少女「アナタの名前……何?」

ティエル「え? ……あ、あの……ティエル、です」

おかしなテンポの会話に戸惑いながらも名前を名乗ると、彼女は自分を指差して言いました。

少女「……サヤ」

ティエル「…………………………え、えっと……あなたのお名前……ですか?」

沙耶「……(こくり)」

ティエル「………………」

……たったこれだけのやり取りで、変な人だと言うことだけは十分に判ったような気がします。

ティエル「ええっと……沙耶……さん?」

沙耶「……何?」

ティエル「ず、ずっと……わたしのお店、見てました、よね……?」

沙耶「ううん……」

ティエル「え?」

沙耶「お店じゃなくて、アナタを見てたの……」

ティエル「…………………は、はあ……その…どうして、ですか……?」

沙耶「……アナタが可愛かったから」

ティエル「……………………それだけ?」

沙耶「ん。…………ダメなの?」

ティエル「いや、ダメっていうか……そのぉ……」

ああ、も、もう限界です。ここからどう話を繋げていいのかまったく判りません〜〜;

沙耶「…………ねぇ、もうご飯食べた?」

ティエル「………………は?」

はじめて向こうから話しかけてきて……いきなりのことに一瞬思考が完全に停止してしまいました。

沙耶「……ご飯。夜の」

沙耶さんがじれったそうに言います。

なんだか可愛い……。

ティエル「……あ、いえ、これから準備するんですけど」

ずっと見てたんなら知ってるんじゃ……。

と思う間もなく沙耶さんがわたしの手を取りました。

ティエル「はい?」

沙耶「一緒に食べに行こう……」

ティエル「あ、あの、ちょっと、沙耶さん!?」

沙耶さんはわたしの抗議も聞かずに、手を取ったまま歩き出しました。

ティエル「あ、わ……」

沙耶「……………………」

おたおたしながら手を引かれて行くわたし。

不思議と強く抵抗する気も起きないまま、夜の街へ足を踏み出しました。

ティエル「……………………」

とあるレストランの客席に座ったまま、わたしは一人、落ち着きませんでした。

沙耶さんはなぜか注文をした後すぐ、「ちょっと待ってて」と言って、お店から出て行ってしまいました。

しばらくして料理が運ばれて来ても、戻ってきませんでした。

あんまり外食なんてしたことないからどうすればいいのかさっぱりです……早く帰ってきて下さい〜〜;

と、おろおろおたおたしているうちに頭が冷えてくると、自分は何であんなおかしな子について行ったんだろうとか、根本的な疑問が浮かんできます。

ひょっとしてこのまま戻ってこないつもりかな……とも思うけど、料理を注文しといてそれをほったらかして帰る行動が意味不明です。……なんとなく、あの子ならやってもおかしくない気もするけど。

ティエル「はあ……」

どうしてかな……全然、逆らう気が起きなかった……。

ティエル「………………」

沙耶「…………お待たせ」

ティエル「あ……」

沙耶「……ごめん。遅くなっちゃった」

ティエル「あ、いえ……その、気にしてません、から」

沙耶「……先に食べててもよかったのに」

ティエル「そ、そんなこと出来ませんよ〜。こんな高そうなところに連れて来てもらって……」

沙耶「そう……」

言いながら、彼女は椅子に座って。

沙耶「……早く食べよう? 冷めちゃうよ?」

ティエル「あ、はい」

沙耶「……いただきます」

ティエル「いただきます……」

そうしてわたしたちは、不思議と全く冷えていない料理に手をつけました。

……それから食事中は、ず〜〜〜〜っと無言でした。

あまりに急展開だったので、わたしのほうは何を話せばいいのかさっぱりでしたし、沙耶さんはそもそも自分から話し出すタイプじゃなさそうだし。

でも、嫌な雰囲気というわけじゃなかったので、気まずい思いはしませんでしたけど。

お互いが食べ終わってからも、しばらく無言で飲み物を飲んだりしていました。

沙耶「……………………」

ティエル「……………………」

………………よし!

わたしは勇気を出して、沙耶さんに訊ねてみることにしました。

ティエル「あの、沙耶さん……どうして、わたしに……その……えっと……あ〜……」

……自分が情けない……。

幸いこのときは沙耶さんのほうから話を振ってくれましたけど。

沙耶「……サヤがどうしてこんなことしたのか気になるの?」

ティエル「は、はい……ずっとわたしを見てたと思ったら、いきなり外に連れ出して……その……あ、イヤというわけじゃなかったんですけど、意味が判らなくて……」

うう、理解できる言葉になってるかなぁ……?

沙耶「……アナタが可愛かったから、連れて来たんだよ」

ティエル「あの、やっぱりそれ理由になってない気がするんですけど……」

沙耶「うん、そう……だよね……」

そう言うと、沙耶さんはすっと立ち上がりました。

ティエル「あ、あの……?」

沙耶「ついてきて……」

そのままさっさと出口へ向かって行くので、わたしも慌てて後を追いかけました。

沙耶さんは相変わらず黙々と歩いています。

そんな沙耶さんを少し早足で追いかけるわたし。

ティエル(さっきの食事代、払わなくてよかったのかなぁ……?)

お店から出るとき、沙耶さんはカウンターには目もくれずに出て行ったんです。

店員さんもまったく気にした様子がなかったけど、あれって大丈夫なんでしょうか?

お店を出たときに沙耶さんに聞いてみたけど、「別にいいの……」って、それだけでしたし。

沙耶さんがそう言うならいいのかもしれないけど、後でおまわりさんとか来ないかとか、ちょっと不安になります。

ティエル「わぶっ!? ……あ、す、すみません沙耶さん……ん?」

考え事をしながら歩いていたせいで、うっかり沙耶さんにぶつかってしまいました。

沙耶さんは、ひとつの建物の前で立ち止まっていました。どうやらここが…………。

ティエル「……あ、あのぉ……沙耶、さん?」

沙耶「ん?」

ティエル「ここが……目的地なんですか……?」

沙耶「ん」

頷く。

ティエル「で、でもここって……あ、ちょ、ちょっと沙耶さん!?」

すたすたとその建物の中に入って行く沙耶さん。

わたしはさすがに少しためらいつつも、急いで追いかけました。

ティエル「ま、待ってくださいよぅ。ここって、ここって……」

ラブホテル……っていうものじゃないですか〜〜!

ティエル「あの……どうしてこんなところに……?」

沙耶「……………………」

さっきからこの質問は無視され続けです。こっちはたぶんゆでダコみたいに真っ赤なのに、沙耶さんには全くそんな様子はありません。

でも……なんとなく楽しそうに見えるのは気のせいでしょうか?

それから、沙耶さんはとある部屋の前で立ち止まり、コンコン、とノックをしました。

中から「はーい」と返事が帰ってきました。

ティエル(お、男の人の声だぁ……)

とおたおたしていると、がちゃりと扉が開いて、中からいかにも学生っぽい男の人が顔を出しました。

男1「おっ、やっと来てくれたんだ」

沙耶「うん……お待たせ」

男1「そっちの娘がさっき言ってた娘か?」

沙耶「うん……可愛い……?」

男1「ああ、君もね」

そう言うと彼は顔を引っ込めました。

……し、心臓の音がうるさいです。

ティエル「さ、沙耶さぁん……」

沙耶「行こ……」

あ、あ、あ…………。

入ってっちゃった……。

沙耶「……早く」

じれったそうにわたしに言う沙耶さん。

ティエル(う、ううぅ…………えいっ!)

わたしは勇気を振り絞って、その部屋に飛び込みました。

部屋の中にはさっきの人のほかに、もう一人男の人がいて……。

ティエル「……………………」

固まりました。

ティエル(う、うわ〜、うわ〜……ガラス張りのシャワー室とかある〜……)

沙耶「ティエル」

とん

ティエル「ひゃいっ!」

変な声出ちゃった……。

きゅ、急に肩を叩かないで下さいよ沙耶さ〜ん(泣)

と思ったけど緊張のあまり声が出ませんでした。うう……

沙耶「……緊張してる?」

ティエル(あ、あたりまえじゃないですかぁ〜〜。っていうかどういうことなんですかこれ〜)

沙耶「あのね、食事の前に、サヤ少し町に出てたでしょう? ……あれね、この人達に声かけてたの。ティエルと一緒に遊ぶのに楽しそうな人探したんだよ」

ティエル(あ、遊ぶって何をするんですかこんなところで?)

沙耶「それで、サヤたちこれからお食事だから、先にここで待っててってたのんだの」

ティエル(そ、そうなんですか。男の人が二人でラブホテルなんて、入るときに周りの目が気になったでしょうね)

……もうわけがわかりません。

男2「おい、早く始めようぜ。俺たち結構待たされてたんだからよ」

さっきの人がそう声を掛けて来ます。

は、始める……。

その意味を考えて、わたしはごくりと唾を飲み込みました。

沙耶「うん……」

沙耶さんはそう頷くとこっちに顔を向けました。

そして真っ赤なわたしの顔を見て、くすり、と笑みを零しました。

ティエル「………………」

……沙耶さん、笑うとあんなに可愛いんだ……。

すぐに無表情に戻ったけど、その笑顔はとても印象的でした。

沙耶「……ティエルはまだ緊張してるみたい。じゃあ……」

少しだけ二人の男の人を見比べて。

沙耶「……アナタ、先にしよう」

さっき扉から顔を出したほうの男の人に、そう言いました。

男2「えー、別に一緒にヤってもいいじゃんよー」

沙耶「そんなこと言わないでよ……ティエルは初めてなんだから、ゆっくり教えてあげたいの……ね?」

男2「う゛っ……」

沙耶さんに甘えるような声で言われ、不満を漏らした男の人は黙り込んでしまいました。

男1「じゃあオレと……」

沙耶「うん。アナタ、裸になってそこのベッドに寝てくれる?」

男1「あ、ああ……」

無口な感じの沙耶さんにテキパキと指示され、男の人は少々面食らったように服を脱ぎ始めます。

そして、ベッドに仰向けになりました。

沙耶「ティエル、見ててね……?」

沙耶さんはその人の下半身の方に回りながら、わたしにそう声を掛けてきました。

そのわたしはと言えば、やっぱりさっきから固まりっぱなし。

驚きと戸惑いと恥ずかしさと好奇心がごっちゃになって、完全に思考がショートしていました。何も分からないまま、男の人の……その……お、おチンチン……を凝視していました。

沙耶さんの手がそれに触れると、男の人が軽く声を上げて……。

男1「ぅぐっ……」

沙耶「……気持ちいい? ぺろ……」

ティエル(う、うわ〜…うわ〜……)

沙耶「ぺろ…んっ…ちゅぷ……」

沙耶さんが男の人のおチンチンを口に含んで、とってもイヤらしい音をさせています。

沙耶「んっ…んちゅ、ぷっ……」

男1「んぐっ……ちょちょ、ちょっと、待っ……」

沙耶「ちゅぱ…んっ……別に早くても恥ずかしいことじゃないよ……? ほら……」

沙耶さんが口を離して手でおチンチンを擦りはじめます。するとすぐに、そのおチンチンの先から…………えーと、アレって……。

沙耶「……ティエル、これが精液だよ……。知ってはいるよね?」

あ、あれが精液なんですか……。ほんとに白くて粘っこそうです……。

沙耶さんはひとしきり自分の顔にティエル精液を指ですくって舐め取ると、まだ恍惚状態の男の人のおチンチンに手を添えました。そして……。

沙耶「うん……これ、もういらないよね……?」

そう言うと、そのおチンチンを……取りました。

男1「え? ……!? うぎゃああああああああああっ!!」

男2「うわああああああっ!?」

ティエル「きゃあああっ!?」

取られたおチンチンのあった場所から、勢いよく血が噴き出しました。思わず顔を背けます。

わたしたちはベッドの横にいたのでそれほどでもなかったけど、沙耶さんはまともにそれをかぶっていました。

沙耶「………………」

ぐじゅっ、ぐちゅっ

おとこ1「うぎゃっ、うぎゃああああああああ!!」

目だけをそちらに向けると、沙耶さんがおチンチンのあった場所に手を入れて、掻き回しているのが見えました。

ティエル(い、痛そう……)

沙耶「……痛い?」

男1「ギャッ、ギャッ、ぎゃああああああああ!」

沙耶「ほんとに痛そう……少し、休ませてあげるね」

男の人の中から沙耶さんの真っ赤に染まった手がずるりと出てきました。それを無表情ながらも少し紅潮した顔で舐めます。男の人の「そこ」からは、噴き出す血が突然止まっていました。

痛みも弱まったのか、男の人は深い息を繰り返します。

男1「はひーっ、はひーっ……」

沙耶「……どうだった?」

男1「うっ……」

ベッドの脇に座った沙耶さんに尋ねられて、男の人はびくりと体を震わせました。

沙耶「ねえ……次はどこをいじめてほしい?」

そう言いながら、沙耶さんは恐怖に震えるその人の身体にうつ伏せに倒れこむと、ゆっくりと胸の辺りを撫で回し始めました。

男1「うあ……うああ…………」

沙耶「……………ここにするね………」

始めから答えは期待していなかったのか、沙耶さんがスッと男の人の左胸に指をなぞらせます。

すると、そこがナイフでもあてがったかのようにすっぱりと切れ、血が勢いよく噴き出してきました。

男1「あぎゃああああああああああああああ!!!」

沙耶「まだ悲鳴は早いよ……」

沙耶さんの赤い手が男の人の胸に沈み込みます。

さらに大きくなる悲鳴を、何の感情も浮かばない眼で―――それでもわたしには楽しそうに見えました―――聞きながら、その中をかき混ぜるように手を動かします。グチュグチュという音が、やけに大きく部屋の中に響きました。

沙耶「……………………」

ズッと音をさせて出てきた沙耶さんの手には、ドクドクと脈打つ『何か』が握られていました。

沙耶「これ……アナタの心臓……」

男1「あがっ……がぁ……」

ティエル(……? 悲鳴のあげ過ぎで声枯れちゃったのかな……?)

苦しそうに呻くだけの男の人を見て、わたしはそう思いました。心臓を取られたら死んじゃうんじゃないかという疑問も、今のわたしには沸いてきませんでした。

ただ目の前の光景から眼が離れません。

沙耶さんがおチンチンのあったところに開いた穴に心臓をぐちゅりと入れたところでした。

沙耶「……………………」

男1「ひぎっ、ひぎゃああああっ!」

沙耶「……………………」

そこをぐりぐりとかき混ぜる沙耶さんの頬が、なんだか紅く染まって来たような気がします。

沙耶「……ん……そろそろ、サヤも興奮してきたかな……?」

まるで他人事のような言い方です。

沙耶さんは脇に置いてあった男の人のおチンチンを手に取ると、元あった場所へあてがいました。

不思議なことに、次の瞬間にはおチンチンは完全に元の状態へと戻っていました。

沙耶「……ちょっとまってね……」

そうしてベッドの脇へ座りなおすと、スカートの下の真っ白なパンツを脱ぎました。

そのとき、わたしと目が合います。

ティエル「あ……」

沙耶「……ティエル、眼を逸らしちゃ……ダメだよ……?」

ティエル「………………」

言われなくても、私の目はそちらに釘付けで、逸らすことなどできそうにありませんでした。こんなに血が出て、恐い光景のはずなのに……。

沙耶「うん……」

そんなわたしの様子に満足したように頷き返すと、男の人に馬乗りになるような体勢になりました。

男1「あ、あああ……」

沙耶「いくね……」

わたしに見えるようにでしょうか、スカートをまくりながらゆっくりと腰を下ろしていきます。

つぷりと音がして、彼女の膣はあっという間に肉棒を飲み込んでしまいました。男の人が思わず呻いたようです。

沙耶「ぁふ……」

沙耶さんはほんのりと頬を染めながら、男の人の上に倒れこみました。男の人と沙耶さんの顔が、触れそうなくらいに近づきます。沙耶さんの両の手が彼の頬を包み込みました。

男1「ひ…う、うわあああ!」

バタバタともがきますが力が入らないのか何の抵抗にもなっていません。顔を逸らしたくても抑えられて動きません。どうしてか瞼を閉じることすらできないようです。

沙耶「……サヤがこわい?」

男1「い、嫌だ……うわああああああああ!!」

沙耶「あんまり暴れないで……ホラ、気持ちよくしてあげるから……」

そう言った沙耶さんの膣中から、ぐちゅぐちゅと音が響き始めました。掻き回しているような、淫靡な音です。

男1「あっ、あっ、ああああ……」

沙耶「……………………」

……しばらくそうしていた沙耶さんが、何の前触れもなく指を彼の左眼に突き刺しました。

虚を突かれた男の人は、大きな悲鳴をあげます。

男1「あっ、ぎゃああああああああああああああああああああ!!」

沙耶「………………」

沙耶さんは無表情のまま、黙って指を動かし続けます。

男1「やっ、やめ、やめてっ、ぎゃああああっ!」

沙耶「あ……ん……」

沙耶さんの口から悩ましげな声が漏れ始めていました。

沙耶「はあ……サヤ、そろそろ……イキそう……」

沙耶さんが腰を振り始めました。沙耶さんの中と、男の人の眼球から漏れるグチュグチュという音は、次第に大きくなっていきます。

沙耶「んっ……はぁ……アナタも、一緒にイこう……」

男1「ぎっ、ぎぇっ、ぎぇえええええ!」

グジュ、グジュルッ

男1「あっ、ぎゃっ、ぎゃっ、ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

沙耶「ああ……ん……」

男の人が一際大きな悲鳴を上げたと同時に、沙耶さんは一際熱い吐息をつきました。身体も、びくびくと震えています。

そうして男の人の上に寝込みながら恍惚状態に陥っていた沙耶さんも、しばらくすると少しだけ身体を起こし、また覗き込むような体勢になりました。

沙耶「うん……楽しかった……」

口元に少しの笑みを浮かべながらそう言って、指を眼球から引き抜くと、男の人の頭を撫でながら優しく言いました。

沙耶「……もう、死んでいいよ……」

男1「あ、あ、があああああああああああああっっっ!!!」

ばああんっ!

ティエル「!!」

……その絶叫を最後に、彼の身体は弾け飛んでしまいました。肉片や血が部屋中に飛び散ります。

わたしのほうにも飛んで来ました。勢いよくぶつかってきたので、少し痛かったです。

ティエル「………………」

視線をベッドに戻すと、顔に付いた肉片を取って口に含んでいる沙耶さんと目が合いました。

ティエル「………………」

沙耶「…………(にこっ)」

ティエル「……う……」

ぞくり、と身体を悪寒が駆け抜けました。

けど、それは恐怖とかじゃなくて……。

ティエル(なんなんだろ……この感覚……)

けれど、その正体を突き止める作業は、わたしの隣にいた男の人の声に遮られてしまいました。

男2「うっ、うわああああ!!」

あっ、と思った瞬間には、彼は扉に駆け寄り、逃げ出そうとしていました。

ガチャガチャと狂ったようにノブを回していましたが、わたしにはなぜか解ってしまいました。

この部屋からは出られない。この空間は沙耶さんが支配してるんだって。

沙耶「……………………」

ティエル「………………あ」

気が付くと、沙耶さんが目の前に立っていました。じっと、無表情な眼でこちらを見ています。

ティエル「……………………」

ぞくり

血に濡れたその顔を見ていると、またあの感覚が走り抜けました。

沙耶「……どうだった?」

ティエル「え………?」

沙耶「さっきの人が死ぬのを見て、どんな風に感じた……?」

ティエル「えっ……と……」

それは……………

本当なら恐いと言うところなのかもしれないけど。

早鐘を打っている胸に手を当てる。

ティエル「その……」

うまく言葉にできない。いや、言葉にしちゃいけないような気がする。

言葉にしたら……人間じゃいられなくなるような気がしたから。

沙耶「……わかった」

ティエル「え……」

そう言うと、沙耶さんはドアに体当たりしている男の人のほうに歩いて行きました。

沙耶「……ねえ」

男2「うわっ、ひっ、ひいいいい!!」

沙耶「……ベッドに横になってくれる?」

男2「うわっ、うわっ、うわああああああああ!!」

沙耶「……………………」

話も聞かずに大暴れする男の人を見て、沙耶さんは軽くため息をつきました。

沙耶「……どうしておとなしくサヤの言うこと聞いてくれないのかな……?」

沙耶さんがそう言った次の瞬間、男の人の身体が浮かび上がり、ベッドに仰向けに―――さっきの人と同じ体勢になっていました。

男の人はさらに大きな悲鳴をあげて暴れ回ろうとしますが、どうやら首しか動かないようです。

沙耶「……ティエル、手を出して」

またいつのまにかわたしの前に立っていた沙耶さんは、そう言いました。

ティエル「え? は、はい」

差し出したわたしの手のひらに、一振りのナイフが置かれました。

半分ぼーっとしていたわたしの頭も、さすがに少し驚いたようです。

ティエル「あ、あの……これ……」

沙耶「サヤ、シャワー浴びてくるから……。アナタは好きなように遊んでて」

ティエル「ど、どういうことですか……?」

沙耶「たくさん血が付いちゃったから洗おうと思って……」

ティエル「そっちじゃないですよぅ〜……」

沙耶「………ティエルも……したいんじゃないの?」

ティエル「う……」

一瞬詰まってしまったけれど、すぐに言い返します

ティエル「そ、そんなことないですっ。だってだって、人を殺すのは悪いことで……っ」

沙耶「サヤは殺せなんて言ってないよ……」

ティエル「うぐ……っ」

沙耶「……………………」

ティエル「……………………」

沙耶「…………ウフフッ……」

完全に詰まってしまったわたしを見て、沙耶さんはとても楽しそうに笑いました。

わたしの方は気まずさでいっぱいです。

ティエル「う〜……」

沙耶「……じゃあ、サヤはシャワー浴びてくるね」

ティエル「ちょ、ちょっと……」

沙耶「アナタの好きにすればいいよ……。別に何もしなくてもいいんだよ」

そう言って、さらりと服を脱ぐと、沙耶さんはガラス戸の向こうのシャワー室に行ってしまいました。

ティエル「どうしよう……」

残されたわたしは、ナイフを手にしたまましばらく呆然としていました。

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