彼女たちの日常

憐「ん……」

うっすらと目を開けると、沙耶お姉ちゃんの顔があった。

沙耶「……おはよう」

憐「…ん〜……あれ? 憐、寝ちゃってた?」

沙耶「……うん、もう夜だよ」

憐「……わあ……」

気付いたら、お姉ちゃんの後ろに星空が輝いているのが見えた。

そうだ、憐、お姉ちゃんと一緒に遊んでて……。

ちょっと見渡してみると、たくさん死体が転がっていた。

もう元が人間だったなんて判らないものもいっぱいある。

沙耶「……レン、あの人に抱きついたまま寝ちゃったの……」

そう言って、お姉ちゃんが転がってる死体の一つを指した。

手足がちぎれて、お腹や胸から内臓が飛び出してて、顔もぐちゃぐちゃで、何とか人間ってわかるくらいの死体だった。

憐「そっかぁ……昨日寝るの遅かったからなぁ……」

沙耶「……だから、サヤがちゃんと寝かせてあげたの……えらい?」

憐「うん……ありがとう、お姉ちゃん。うれしいよ」

お姉ちゃんは、お姉ちゃんなのにこうして憐にも褒めてもらいたがったりする。

こうやって膝枕してくれたりするところは、ちゃんとお姉ちゃんっぽいのになぁ……。

憐「気持ちいい……」

沙耶「……まだ眠い?」

憐「えへへ……うん」

沙耶「……じゃあ、お城に戻って寝よう」

憐「え〜、このままじゃダメ?」

沙耶「……サヤも眠いの。おなかすいたし……」

憐「う〜…わかった。……でも、もう少しだけ、ダメかなあ?」

沙耶「…………少しだよ」

憐「うんっ!」

狭い膝の上できゅっと寝返りをうつ。

憐「えへへ〜♪」

沙耶「……クスッ……」

それからしばらく、二人で他愛のない話をした。

でね、その時の悲鳴がもうすごくって―――――

……あのときのレンの顔、可愛かった……―――――

そしたらね、「助けてくれー」って涙をぼろぼろ流しながら言うの―――――

……うん、それで最後に、「ぐちゃ」ってしてあげたんだよね―――――

ねえ、お姉ちゃんは殺すときの何が一番好き?―――――

…………レンは?―――――

憐はねえ、男の人のおチンチンいじめたときの声かな―――――

……サヤは……ん……決められない。殺すこと、全部好きだから―――――

あはは、お姉ちゃんらしいね―――――

憐「ええっと……それで、ちょっと話が弾んじゃって……」

マナ「それでこんなに遅くなってしまった、と?」

沙耶「…………(しゅん)」

お城の厨房、マナお姉ちゃんの前で、憐たち二人は小っちゃくなっていた。

マナ「もう片付けちゃったのに……。遅れるならそう言ってきなさいよ」

憐「う〜……ごめんなさい」

沙耶「……ゴメン」

くー

マナ「……しょうがないなぁ。簡単なものでよければ作るけど?」

憐「あ、ありがとう!」

マナ「まったく……お腹くーくー言わせた人たちを前にして何もしないでいるなんて、料理人の名折れだしね」

沙耶「……ありがとう」

マナお姉ちゃんは、今まで遊んでいたらしいおもちゃをさっと殺すと、さっそく準備にかかり始めた。

マナ「すぐできるから、食堂のほうで待っててもらえる?」

〜食堂〜

この食堂は憐たち専用で、お城で働いてる人たちの使う食堂よりはずいぶん狭いの。客室よりちょっと大きい程度かな。

さっきのマナお姉ちゃんっていうのは、このお城のコックなんだよ。もちろん腕は超一流。憐もいつも楽しみにしてるんだよ。

大勢の人の分を一気に作るから、後れたり、食べないときは連絡しておくのが決まりになってるの。みんなあんまり守ってくれないって、こないだグチをこぼしてたけど。

それから、お姉ちゃんは憐たちのとは別に、お城の兵士さんや使用人さんたち全員の分まで作ってるんだよ。そっちの料理には、食べると中で成長してお腹を食い破る変な種とかたま〜に入れるから、みんなビクビクしながら食べてるんだって。

マナ「―――お待たせ」

とん、と置かれたお盆の上には、温かそうなお魚のスープと、サラダが乗っていた。

マナ「ちょっと少ないけど、これで我慢してよね」

お皿を憐たちの前に並べながら、お姉ちゃんが言う。

憐「ううん、憐たちが悪いんだし……ごめんね、マナお姉ちゃん」

沙耶「……ありがとう」

その返事に軽い笑みを浮かべながら、お姉ちゃんは憐たちの隣に腰を下ろした。

いただきます。

マナ「……二人とも、エルミリア様と違って素直だね」

憐「? エルお姉ちゃんが、どうかしたの?」

マナ「あ〜、たいしたことじゃないんだけど」

沙耶「……エルミリア、またわがまま言ったの……?」

マナ「ん、まあ、ね。夜中にわざわざ部屋までやってきて、夜食作れと言われたときには、毒でも盛ろうかと思ったよ。……効かないのは解ってるけどさ」

憐「あ、はは……なんていうか、エルお姉ちゃんらしいね……」

沙耶「…………。でも、そのときマナが寝てたら、きっと催促はしなかったと思う」

憐「あ、それ憐も思うな。お姉ちゃんわがままなくせに変なところで遠慮するんだよね」

マナ「……そうね。なんだかんだ言っても相手が不快になることはしないもんね」

―――そうやって、遅い食事と会話を楽しんだあと、ようやく部屋に戻ってきた。

憐「沙耶お姉ちゃん。今日、お姉ちゃんの部屋で一緒に寝ていい?」

沙耶「……いいよ」

そう言いながらお姉ちゃんが自分の部屋のドアを開けた。

「あぎゃあああああああああああああああああああああああああああ!!」

「イギャッ、ギャビッ、ヒギイイイイイイイイイイイイイイ!!」

「やっ、やべっ、た、たずげでっギャッぎゃあああああああああああああああ!!」

パシャ…と、部屋に足を踏み入れると、床を覆いつくした血が跳ねる。

沙耶「ただいま……」

憐「おじゃましま〜す♪」

さっきの食堂の倍くらいある部屋は、中心にテーブルやベッド、クローゼットなど、普通の女の子の部屋にあるような物が密集して(それでも充分な広さはあるけど)置かれ、周りにはさまざまな拷問器具と、それにかけられて血を噴いて悲鳴を上げる人間たちがたくさんのたうちまわっていた。

この器具たちにはね、何もしなくても勝手に動くような魔法がかかってるの。それで、今拷問にかけてるおもちゃが死んだら、床に転がってる何百人もの人たちの中から一人選んでまたそれにかけるの。

その床に転がってる人たちは、どっかから適当に補充されて来てるんだよ、たぶん。

だから、沙耶お姉ちゃんがいるときもいないときも、いつもこの部屋から悲鳴は消えないんだよ。

憐「むにゃ……」

こてん、と沙耶お姉ちゃんに寄りかかる。

沙耶「……まだ寝ちゃダメ。ベッドで寝て」

憐「ん〜……ゴメン。ふぁ……この部屋の悲鳴、子守唄みたいで気持ちよくって……むにゅ……」

沙耶「……もう……」

お姉ちゃんに寄りかかったままベッドまで行って寝転ぶと、あっというまに意識が落ちそうになる。

それを少しだけこらえて、お姉ちゃんに言った。

憐「お姉ちゃぁん……明日、憐とお買い物に行かない……?」

沙耶「……今日も一緒に遊んだのに……」

憐「……ダメ?」

沙耶「…………いいよ」

憐「えへへ、やったぁ……ん……」

まぶたが勝手に……降り…て……

沙耶「フフッ……おやすみ、レン……」

憐「くー……」

朝になると、やっぱり悲鳴で目が覚める。

……なんだか、子守唄と目覚まし時計を同時にかけてるような感じ、かな?

憐「……うにゅ……おはよ〜……」

ごろんと寝返りを打つと、お姉ちゃんの寝顔が目の前にあった。

憐「………………」

お姉ちゃん、かわいい……。

……チュッ♪

沙耶「ん……」

憐「あ、起きた? お姉ちゃん」

沙耶「ん……おはよ……」

お姉ちゃんは寝ぼけ眼を擦りながら身を起こした。そして、床に転がってる人間の一人を憐たちの上に浮かべると、ぐちゃってただのお肉に変えてあげた。

憐たちに血のシャワーが降りかかってくる。

沙耶お姉ちゃんは、相変わらずぼ〜っとした顔でそれを浴びてた。

これは、お姉ちゃん式の朝の洗顔みたいなものかな。

ちなみに憐の朝はだいたい精液なんだよ。でも、今日はいいかな。

沙耶「はふ……」

憐「あはは……」

眼を擦りながらあくびをするお姉ちゃんに苦笑しながら、憐は顔に付いた内臓を取ってあげた。

朝食を食べたあと、憐たちは昨日の約束どおり日本の商店街に来ていた。

って言っても、買うものは特に決めてなかったんだけどね。

とりあえずウィンドウショッピングして、いい物があったら買おうかな〜……って。

……ホントはお姉ちゃんと一緒に居たかっただけなんだけど。それは、お口にチャックかな。

憐「ねえねえお姉ちゃん、これどうかな?」

で、今憐たちがいるのは商店街の入り口付近にあるお洋服屋さん。

沙耶「……うん、似合ってる。…………。…………こっちの服も、いいと思う……」

憐「あ、ホントだ♪ う〜ん、どっちもいいなあ……買っちゃおうかなぁ……う〜ん……」

沙耶「………………」

憐「ねえお姉ちゃん、どう思う?」

沙耶「………………」

憐「……? お姉ちゃん?」

沙耶「……あ、ごめん」

憐「?」

沙耶「……あれ、見てたの」

憐「あれ? ……ああ、ゴスロリ服ってやつだよね」

お姉ちゃんが掛かっているその服を取って自分に当てて見せる。

沙耶「……こういうの着て殺してあげたら、みんな恐がってくれるかな……?」

憐「わあ……すごい、よく似合ってるよ、お姉ちゃん」

そういえば、お城にはこの手の真っ黒な服着た人っていなかったなぁ。けっこうエルお姉ちゃんの好みだと思うんだけど……。

憐「うん、きっとみんなすごく怯えてくれると思うよ」

……と、お姉ちゃんには言うけど。実際はどうかなあ……。沙耶お姉ちゃんに殺される人ってこれ以上ないくらいの悲鳴あげてるし……。

沙耶お姉ちゃんはね、お城の中で一番残酷だって、憐も含めてみんなが思ってるの。拷問とかにすごく詳しいし、実は24時間悲鳴が響き続けてるのなんて、お城の中でも沙耶お姉ちゃんの部屋だけなんだよ。

憐が今まで聞いた中じゃ、お姉ちゃんが殺した人の悲鳴が一番すごかったし、あれ以上になるなんてあんまり想像できないなあ……。

あ、ちなみに憐はね、「一番エッチな娘」って言われてるんだよ、えへへっ♪

憐「お姉ちゃんのイメージにもぴったりだし、買ってみたら?」

沙耶「うん……。…………?」

憐「あれ、どうかした?」

沙耶「……サヤのイメージって、こんな真っ黒なの……?」

憐「え? ……えーと……」

沙耶「……………………」

憐「う〜ん、と……」

沙耶「……すこし傷ついた……」

憐「え、えっと……その」

沙耶「……冗談」

憐「は?」

沙耶「……買ってくる」

沙耶お姉ちゃんはクスリと笑うと、服を抱えてレジのほうへ歩いて行った。

憐「あ、あは……。相変わらず、よくわかんない思考……」

お姉ちゃんがあんな冗談を言うのは珍しい。ある意味貴重な物が見れたかなと、ちょっと混乱した頭で考えながら、慌てて後を追いかけた。

憐「待ってよ、お姉ちゃん」

会計を済ませて、出口へ向かう。

えへへ、それじゃ……。

そう思って店内を振り返る……と同時に。

「うっ」

とうめき声が聞こえたかと思うと、お店の中が真っ赤に染まった。

お店の中にいたそれなりの数の人間が、全部ただの血と肉の塊に変わっていた。

憐「………………」

憐、ちょっと呆然となっちゃった。でも、はっと我に帰ると、お姉ちゃんのほうに詰め寄った。

憐「ず、ずるいよお姉ちゃん! 憐がやろうと思ってたのに……!」

沙耶「そうなの……?」

お姉ちゃんはちょっと首をかしげて、

沙耶「……早い者勝ち……」

憐「ず〜る〜い〜!」

沙耶「……そんなに怒らなくても……」

お姉ちゃんはちょっと困ったような顔をして、憐に言った。

その顔を見ると、すこしだけ憐も頭が冷えた。よく考えたら、別に今出来なかったってだけでそんなに怒ることもないよね……。

自分が取ろうと思ってたお菓子を横取りされて腹は立ったけど、別に最後の一つを取られたわけでもないし……。

憐「……わかった。じゃあ、次のお店は憐にやらせて?」

沙耶「……いいよ」

そう頷くお姉ちゃんの顔(無表情だけど)を眺めていると、だんだん悪い気持ちになって来る。

憐「……ごめん。その……怒ったりして」

沙耶「………………」

沙耶お姉ちゃんはにっこりと笑って、憐の頭をなでなでしてくれた。

えへへ……。

沙耶「……そろそろ出よう? 靴に血が付くよ」

憐「……うん」

こっちに流れてくる血を避けるように、憐たちはその店を出て行った。

それからしばらく、アクセサリーとかのいろんなお店を見て回った。

思ったよりいろんなもの買っちゃったな。まあ、買ったらすぐにお城に送ってるから、ずっと手はヒマな状態なんだけどね。

憐「ねえ、お姉ちゃんは何にする?」

沙耶「…………イチゴミルク」

憐「え〜と、じゃあ、イチゴミルクとチョコバナナをくださ〜い」

露店で買ったクレープを、商店街の片隅にある公園のベンチで食べた。

う〜ん、こんなのがお昼ご飯なんて身体に悪いなあ……なんてね。

憐「わあ、けっこうおいしいね」

沙耶「……マナのほどじゃない」

憐「あはは、あれと比べるのはかわいそうだよ」

沙耶「ん……もぐもぐ……」

なんだかんだ言いながらも結構おいしそうに食べてるよね、お姉ちゃん。

憐「はあ、でもちょっとめんどくさいよね。どうせ殺しちゃうんだからお金なんて払わなくてもいいと思うんだけどなあ」

あ、でもクレープ屋の店員さんは殺してないよ。露店だから殺すと目立っちゃうし。

沙耶「……でも、払わないとエルミリアに怒られる……」

憐「うん、憐も一回やってちょっと怒られた。……でも、どうしてダメなのかな?」

沙耶「……エルミリアに訊いてみたことないの……?」

憐「あ、うん、なんとなく訊きそびれちゃって。沙耶お姉ちゃんは知ってるの?」

沙耶「……エルミリアね、人のものを無断で取る……『泥棒』は好きじゃないんだって」

憐「そうなの? ……憐たち、命は勝手に貰ってるよ?」

人の社会から見ても、「殺人はよくて泥棒はダメ」なんて、きっとおかしいと思うし……。

沙耶「……んと……エルミリアにとって、泥棒っていうのは……たぶん……『美しくない』からダメ……なんだと思う」

憐「………………。人の命を奪ってる憐たちは綺麗ってこと?」

沙耶「……うん。サヤも、そう思うけど」

憐「え〜?」

沙耶「だって……じゃあ、サヤが人を殺してるときの姿を思い出してみて?」

憐「……うん」

沙耶「感想は?」

憐「お姉ちゃん素敵」

沙耶「……じゃあ、次はサヤがこそこそ泥棒してる姿を思い浮かべて?」

憐「………………………………」

沙耶「……どう?」

憐「……お姉ちゃん、こんなこと絶対しないで」

沙耶「……ね?」

憐「うう…よくわかりました……」

でも、別にこそこそはしないと思うんだけど……。

お昼ご飯を食べ終わって、また街に戻ってきた。

憐「え〜っと、次はどこに行こうかなあ……」

「ぐっ……があああああああああああああああああ!!」

憐「ふぇ?」

突然の絶叫に振り返ってみると、沙耶お姉ちゃんの手が通行人の一人の胸を貫いていた。

憐「あ〜っ! 何してるのお姉ちゃん!!」

沙耶「あ……」

憐が叫ぶと、まるで今気づいたようにお姉ちゃんが手を引っ込める。

ブシュッと、穴の開いた胸から血が噴き出した。お姉ちゃんは、倒れていくその人のほうじゃなく、真っ赤になった自分の右手を無表情に見つめていた。

ドタン、という音が周囲に響く。その音が消えて数秒。まるで時が止まっていたように静かだった周りがざわつき始めた。

……へえ……みんな悲鳴をあげて逃げ出すと思ってたんだけど……これだけ人が多いとまた違うんだあ……。

憐「とっ……お姉ちゃん! もお……」

沙耶「レン……ゴメン」

憐「う〜……どうしていきなり殺しちゃうのぉ……? まだ行きたいお店とかあるんだよ?」

沙耶「……こんなにたくさん人がいて……サヤ、我慢できなくて……」

憐「……はあ。お姉ちゃん、殺人中毒だよ」

沙耶「……そうかも」

憐「……そこで嬉しそうにしない」

沙耶「……まだお買い物するなら……元に戻す?」

憐「え? う〜ん……」

まあ、確かに時間を元に戻すとか周りの人たちにこのことを忘れてもらうとか、やろうと思えば出来るけど……。

憐「……いいや。これも楽しいし、他はまた今度にするよ」

来るのは、この街じゃないけど。

沙耶「……じゃあ、いいんだよね?」

憐「あはは……うん」

お姉ちゃんはほんのりと顔を赤くして嬉しそうに顔を緩ませながら言う。

いっつも無表情なぶん、こうやって少し変化があるだけで、ものすごくうれしいんだなっていうのがよくわかる。

憐「まったく、わかりやすいんだかわかりにくいんだか……」

呆れたようなため息が出る。

あ、今の憐、ちょっと大人っぽかったかも♪

「ちょっと、キミ」

人ごみから出てきた男の人が、お姉ちゃんの肩に手を置いて呼びかけた。勇気を出したのかそれともおまわりさんとかなのか、どっちにしてももう少し早く出てきなよ、と思った。

沙耶「………………」

お姉ちゃんが男の人を見上げる。その顔はやっぱり無表情で何を考えているのかわからない。

「一体、これは君が…いや、君はこの人について何か……」

沙耶「……はなして」

いろいろと訊きだし始めるその人の話をさえぎるようにお姉ちゃんが言った途端、その人の置いた手が肩口からずっぱりと切断されていた。

「うわあああああああああああ!!」

男の人の口から苦悶の声が漏れ、傷口から血が噴き出すのと同時に、周囲から今度こそ悲鳴が上がる。

ぐじゃっ

「ぐぎゃああああああああああああああああああああああああああ!!!」

さっきよりいい音と、声がして、見ると、片足がぐしゃぐしゃに潰されていた。

ぐらりと倒れかける背中を、お姉ちゃんが抱きとめる。

憐「あははっ……アレって痛いんだよね〜」

それに、なにをされたのかもわからずに、気が付いたらそうなっていた、でも誰がやったのかはなぜかはっきりとわかる。

そういう状況って、憐が思ってる以上に怖いんだって。前にエルお姉ちゃんが言ってた。

で、自分をそんな風にした相手を目の前にして逃げられない。……きっと心臓破裂しそうなくらいドキドキいってるんだろうなあ♪

ホントはもっとじっくり見ていたかったんだけど、今ので悲鳴が本格的になって、みんながわらわらと逃げ出したからしょうがない。憐はこっちのほうをやんないと。……って、義務でもないんだけど。

とりあえず、まずは一番近くにいた男の人を仰向けに倒すと、その胸板の上に座った。

憐「えへへ、ごめんねおじちゃん。ずっと立ってるのは、憐も疲れるから♪」

「なっ、何を……!」

混乱気味に、憐の下でおじちゃんが暴れる。

憐「もう……おじちゃん、静かにしてよぅ♪」

憐は空中におっきなハンマーを出すと、それでこの人の両手両足を一つずつ潰していった。

「ぎゃがあああああああああああああああああああああああああ!!」

なんどもなんども、元の形がなくなるまで叩き続けた。血や肉片が辺りに飛び散る。

憐「きゃははっ、これでもう暴れらんないよね♪」

おじちゃんはダルマさんになった身体を転がして逃げようとするけど、憐が乗っかってるからそれも出来ないよ。

憐「っとと、早くしないとみんな逃げちゃうよ」

えっと、まずは半径10メートルくらいのところに見えないカベを作ろっか。あんまり広すぎると、遊ぶのも大変だしね。

まあ、遊びの内容によっては町全体だったり世界中だったりすることもあるんだけど。

あ、全速力でぶつかった人が鼻血とか出してる。

さて、次は壁の外の人たちを殺さなきゃね。本当は無理して殺す必要もないんだけど、どうせならたくさん殺したほうがいいよね。まあ、そんなに時間はかけずにあっさりいこうかな♪

ぶちゅってぺちゃんこにしてあげたり、首を切り落としてあげたり、縦に横に真っ二つにしたり……。

たくさん悲鳴が聞こえるけど、殺されてる人たちのじゃなくて『壁』の中から見てる人たちのだね。

うーん、やっぱり世の中早い者勝ちなのかな。洋服屋での沙耶お姉ちゃんの言葉を思い出しちゃった。

だって、外にいる人のほうが楽な死に方できてるもんね。

そんなことを考えながら最後の一人を殺すと、沙耶お姉ちゃんのほうに目を向けた。

お姉ちゃんが片足のなくなった人を支えている体勢は変わらないけど、耳がちぎれてたり手の指がなくなってたりお腹から腸がはみ出してたりと、お姉ちゃんも結構血まみれだね。

今は何もせずにじ〜っとその人の顔を見つめてる。男の人のほうは射竦められたような表情してる。恐怖でもう悲鳴も出ないって感じなのかな。

……うん。きっと殺される人にとっては、お姉ちゃんのあの顔ってすごく怖いんだろうな。

特に表情があるってわけじゃないの。憐も横から眺めたことあるけど、お姉ちゃんって殺す相手には絶対に表情を見せないんだよ。憐たちには笑いかけたりすることもたまにあるんだけどね。

でもね、無表情なんだけど、瞳からは「この人を殺したい」っていう想いがはっきり、誰が見ても判るほど溢れてるの。

あの眼を直接向けられたら、きっとすっごく怖いと思う。口に出す以上に、眼が「殺させて」って頼んでるんだから。

……しばらくそんな風にガタガタと震える男の人を眺めていたお姉ちゃんの口が動いた。

沙耶「……じゃあ、バイバイ」

お姉ちゃんの人差し指がその人の首に添えられる。軽く、押したように見えた。

ピキッという音が響いて、男の人が「がっ」って唸るのと同時にお姉ちゃんが支えていた手を離した。

ゆっくりと、その身体が崩れ落ちる。

どしゃりという音がしたあとは、もうぴくりとも動かなかった。

沙耶「………………」

お姉ちゃんはその死体をしばらく見つめていたかと思うと、くるりとその首を側にいたおにいちゃんに向けた。

「ひっ……」

そのおにいちゃんは恐くて動けなかったのか、沙耶お姉ちゃんから数歩も離れていないところで固まったまま。

それでも目を向けられて身体は危険を感じたのか、ちょっとだけ後ずさった。

そんなおにいちゃんに沙耶お姉ちゃんはスッと近寄って……何のつもりかいきなり抱きしめた。

「ひ…ひいい!!」

じたばたともがこうとするけど、うっかりするとお姉ちゃんの怒りを買ってしまうという思考でも働いたようで、そのもがきには力がなかった。

しばらくぎゅ〜っとその人を抱きしめていたお姉ちゃんは、ゆっくりと顔を上げてその人を見上げた。

沙耶「………………」

蕩けるような朱色の顔。相変わらず無表情だけれど、その色がついただけでお姉ちゃんが何倍も可愛く見えた。

まあ……憐から見れば、だけど。

「ひっ、うわっ…うわああああああああああ!!」

じたばたともがく。さっきより激しく、今度は積極的にお姉ちゃんを引き剥がそうとするけど、びくともしない。

くすくすっ、まぁ、あの瞳に見つめられた上に顔まで赤いんじゃしょうがないかな。密着もしてるからドキドキいうお姉ちゃんの心臓も判っただろうし。

あの人どんな惨い死に方するのかなぁ〜、うふふっ。

憐「さて、と……」

あっちを見ていたいって気持ちも確かにあるけど。

憐「そろそろ憐もやっちゃおうかな♪」

そう言って、ちょん、とおしりの下にいるダルマさんの鼻の頭をついた。

びくりと身体を震わせるダルマさん。

憐「ねね、どんな死に方がいい?」

「殺さ…ないで……お願い……」

憐「や〜だ♪」

言いながら、憐はその人の下口唇を引きちぎってみた。

「うがあああああああああああああああああああああああああ!!!」

びりびりと肉の裂ける感触とともに噴き出す血と悲鳴。

その声を聞くだけでとっても楽しい気分になる。

憐「だって、こんなに楽しいんだよ?」

ゆっくりと、その人の目の前に顔がくるように倒れこむ。

憐「だからぁ……死んで♪ ね?」

口唇のあったところから血を噴き出しながらもガチガチと鳴る歯。とっても脅えた目でこっちを見て……もう声も出ないんだね。

憐「きゃはっ、かわいい♪」

ぺろりと舌を出しておじちゃんの口の中に入れる。

「むっ!? んぐむうぅ!?」

憐「んっ…れろれろ……ちゅぷ……」

ん、下の口唇がないから歯が直接当たるよ……。キスって感じがしないなぁ……。

でも、男の人の口唇って硬いから、あってもなくても一緒だよね。

入れた瞬間には首を動かして逃げようとしたおじちゃんも、憐の舌使いにすぐ抵抗を止めた。

その中を食べつくすような気分でかき回す。頭が蕩けちゃうくらいの快感をあげるね、おじちゃん。

そんな中でおじちゃんも諦めずに舌で憐の舌を押し出そうとしてくるけど、それも簡単に絡めて弄ぶ。

憐「ん…ちゅ……ぷはあっ! もぉ、ダメだよおじちゃん。憐に逆らったら」

舌を離してそう言ってみるけど、おじちゃんの顔は今のキスのためかとろんとしてほとんど聞いてない。

憐「むぅ」

ブチブチブチブチブチッ

ほっぺの肉を、口の中と外の両側からつまんで引きちぎる。

奥歯のむき出しになった口から漏れる絶叫を聞きながら、おじちゃんへのお説教を続けた。

憐「きゃははっ、人の話はちゃんと聞かなきゃダメだよぉ。ね? おじちゃんは憐のおもちゃなんだから。憐にいじられて、死んじゃうのがおしごとなんだよ♪」

にっこりと笑いかけて、憐は体勢を変えた。履いているパンツを少しずらして、アソコをどくどくと血の流れる口元に押し付ける。

憐「えへへ、おじちゃん、憐のこと気持ちよくしてね♪」

言いながら、ズボンのチャックを開けておじちゃんのを取り出す。

憐「憐も、おじちゃんにせーえきたっくさん出させてあげるから♪」

おじちゃんのソレはまだふにゃってなったまま。

さっきのキスで大きくなったと思ったのに……その後のでまた小さくなっちゃったんだ。

憐「も〜、だらしないな〜」

自分でも理不尽だよねと思える言葉を呟きながら、玉とおチンチンを優しく撫でる。

ぴくんとおチンチンがはねると同時に、憐の下の身体もびくりとするのがわかる。

憐「えへっ……痛いのと気持ちいいのが混ざり合って、不思議な感覚でしょ?」

どんどんと大きく、硬くなってくるおチンチン。適当な大きさになったところで、ぺろりと幹に舌を這わせた。

またおじちゃんの身体が震える。

……むー。

憐「おじちゃぁん?」

少し怒った声音をつくっておじちゃんを呼ぶ。それはおチンチンを舐めるよりも刺激が強かったのか、おじちゃんの身体は文字通り跳びはねた。

それだけで、笑い出しそうになっちゃう。ぐっとこらえて、怒った調子を続けた。

憐「さっき、憐のこと気持ちよくしてって言ったよね?」

「う……あ……」

腰を上げて、おじちゃんが喋れるようにしてあげる。でも、おじちゃんはただ意味のないうめき声を漏らすだけ。

憐「……もぅ」

ため息をついたところで、ふと、ズボンが目に止まった。足を潰したから、ぺちゃんこになっている。さっき出た血はもう固まりかけていて、赤黒く染まっていた。

憐「……んー」

すっと指で撫でてズボンを切る。そこから、潰した足の付け根に指を1本差し込んでみた。

「イッギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!……んぶぅっ!?」

とっさに腰をもどして口を塞いでいた。響き渡るはずの叫びがアソコを刺激して……

憐「きゃはぁっ♪ いいよぉ、おじちゃん。すごく気持ちいいよ!」

2本目の指を差し入れてくちゅくちゅとそこをまさぐる。

おまんこに伝わる振動は、全然小さくならない。

憐「きゃはぁん……♪ えへへ、舐めてもらおうと思ってたけど、憐、これだけでイっちゃいそうだよぉ!」

あは…ちゃぁんとこっちも気持ちよくしてあげないとね。

憐は片方の手で支えていたおチンチンにしゃぶりつく。

萎えかけていたおチンチンが一気に硬さを取り戻すのを確かめて、ぐっと奥までくわえ込んだ。

憐「んっ……ちゅる…、ちゅぷっ……ちゅくちゅく……」

喉のほうで先っぽを刺激しながら、ぺろぺろと舌でしゃぶりまわす。

片方の手は玉のほうを揉んで……きゅっきゅってね。

もう片方は……今肘の辺りまで入れてみたところだった。

憐「んちゅ……くちゅう……」

あったかくてくちゃくちゃしてる身体の中。そこに入ってる自分の手を握ったり開いたりしてみる。きゅちゅっとした感覚。

そのたびにおじちゃんが絶叫して。でもほとんど響かずに憐のおまんこの中に吸い込まれていく。

憐「ん……んく……」

ドクッドクッドクッドクッドクッ!

口の中に熱いお汁が注ぎ込まれる。憐が思ってた以上にたくさん出てきた。

全部飲むこともできたけど……わざと少しだけこぼした。そのほうがエッチに見えるんだよ♪

憐「ぷはぁ……えへへ、憐より先にイっちゃったね、おじちゃん」

まだ身体の中にある手はくちゅくちゅしっぱなしだから聞こえてないのはわかってるけど。

憐「えへ、そろそろ憐もイきたいな。激しくするから、もっともっとおっきな声あげてね♪」

そう言って、憐はおじちゃんの身体の中をぐちゃぐちゃにかき混ぜる。

今までよりも大きな振動が憐のおまんこを揺らした。

憐「きゃははっ、気持ちいいな♪ おじちゃん、がんばって。憐をイかせられたら、殺してあげるから♪」

憐は目の前にあるちっちゃくなったおチンチンを、入れてないほうの手で玉ごと掴んだ。

これってね、きゅってちょっとだけ力を入れると、簡単に潰れちゃうんだよ♪

噴き出した血が憐の手を赤く染めると同時に、アソコに伝わる快感がずっと大きく、激しくなった。

憐「きゃふぅっ! あん、やだぁ……気持ちよすぎるよ」

殺したいな……

おチンチンのあった場所から手を入れながら、そう思った。もっと、もっと気持ちよくなりたい……。

だから、周りで遠巻きに見ていた人たちを、数人憐たちの近くに連れて来たの。

それでね……

憐「きゃはっ、死んじゃえ♪」

ぶちゅりと、一瞬で全員をぐちゃぐちゃのかたまりに変えちゃった。

噴き出る血が憐に降り注ぐ。

憐「えへへ、たのしい♪」

それを見たおじちゃんが、ちょっと固まった。

憐「あん♪ おじちゃん、やめないでよぉ」

ぐちゃぐちゃって、2本の手を動かす。声がまたびりびりと憐のおまんこを揺らす。

憐「ね? おじちゃんは悲鳴をあげてるだけでいいんだから……」

あ、そろそろイっちゃいそう。

もっとたくさん刺激が欲しくて、気が付いたら腰を振っておじちゃんの口元をアソコでこすっていた。

憐「きゃはっ、あん♪ おじちゃん、えへっ、たのしいよ、すっごく!」

身体の中に入れた二つの手が同じものを掴んだ。

憐(これ……なんだろ? 内臓だと思うけど……)

ん、まあいいや、引き裂いちゃえ♪

今までで一番大きな絶叫が憐のアソコのお豆に直接響いた。

憐「きゃはっ、きゃははっ、きゃははははははっ♪」

グチュグチュグチュグチュ

アソコがキュゥ〜ってなって……ビクビクしてるよぅ……。

憐「……えへっ、ステキだったよ、おじちゃん♪」

ポン、とおじちゃんの首を目の前に持ってきて、両側から血まみれの手ではさみこむ。

身体のほうは、イクのと同時にぐちゃぐちゃにしちゃったから、もうないの。

おじちゃんの顔は、恐がってるような疲れたような、そんな表情をしていた。

ぱくぱくと口が動いて何かを言おうとしてる。喉が枯れちゃってるのかな。

憐「ん? なあに、おじちゃん?」

「……もう………殺……して…………」

がんばって、それだけ言った。

憐「うん! バイバイ、おじちゃん♪」

だから憐、にっこり笑ってそう言ってあげたの。

パンッて音が響いて、おじちゃんの顔が弾ける。

血に混じって憐にかかる脳みそも、ちょっと気持ちよかった。

憐「えへへっ……はあ…ふう……」

う〜、疲れちゃった。最初からちょっと飛ばしすぎたかなぁ……。

沙耶「……お疲れさま」

憐「わあっ!?」

気付いたら、憐の目の前に沙耶お姉ちゃんがしゃがみこんでいた。

憐に負けず劣らず、全身を真っ赤に染めて。

憐「お、お姉ちゃん……心臓に悪いことしないでよ」

沙耶「うん……」

お姉ちゃんは返事もそこそこに少し近づいてくると、突然憐の頭を抱き寄せた。

憐「わわっ、何?」

沙耶「可愛かったよ……レン」

憐「え…? 見てたの?」

沙耶「うん……」

憐「……えへへ、そっか」

沙耶「……うん」

きゅって、お姉ちゃんが込めた力を少し強くする。

沙耶「レンって、ほんとうに楽しそうにエッチするね……」

憐「え、そうかな?」

確かに楽しいのは事実だけど……。

沙耶「……うん。サヤもそうだけど、イっちゃうときやイっちゃったあとって、だいたいの人はとろんってなってるのに……レンは、ずっと楽しそうな顔してるの。顔は紅くしてたけど……ね」

憐「えへへっ、だってホントに楽しいんだもん。エッチも人を殺すのも、憐、大好きだから♪」

沙耶「……うん。レンを見てると、サヤも楽しくなってくる」

お姉ちゃんは、また少し抱いた手に力を込めると、すごく優しい顔で憐に笑いかけて、言った。

沙耶「……殺そう? レン」

憐「うんっ♪」

………太陽が傾いて、世界が朱色に染まる頃。

みんなを殺し終えた憐と沙耶お姉ちゃんは、赤い血の海に寝転がって、夕暮れ時の空を見上げていた。

憐「……はあ〜〜〜〜〜、楽しかったあ♪」

沙耶「……うん」

憐「……ねえお姉ちゃん、そろそろ帰る?」

沙耶「ん……サヤ、もう少しこうしてたい……」

憐「うん……そだね」

憐もまだ帰りたくなかった。もう少し余韻を味わいたかったから。

憐「でも、暗くなったらちゃんと帰らないと、マナお姉ちゃんにまた怒られちゃうよ」

沙耶「うん……わかってる」

……それから、しばらく会話もせずに空を眺めていた。

景色が朱から紺に変わる頃、憐は口を開いた。

憐「やっぱり、お姉ちゃんと遊ぶのが一番楽しいな」

沙耶「……そう?」

憐「うん、もちろん他のみんなと遊ぶのも好きだけど、一番はお姉ちゃん♪」

沙耶「……フフッ、ありがとう……」

憐「お姉ちゃんは、憐と遊んでて、楽しいかな?」

沙耶「……うん。憐、可愛いし、エッチも上手だし、楽しいよ」

憐「……えへ、そっか」

沙耶「……どうしてそんなこと聞くの?」

憐「ん、なんとなく」

そう、なんとなく、ね。

沙耶「…………レン」

憐「何?」

沙耶「サヤ、レンのこと、好きだよ」

憐「あ……」

とっても優しい笑顔を、お姉ちゃんが憐に向けていた。

憐「うんっ、沙耶お姉ちゃん、大好きっ♪」

……その夜。

うっかり二人して眠りこけちゃった憐たちは、マナお姉ちゃんにこってりとお説教をもらったのでした。

マナ「二人とも、晩ご飯抜き!」

沙耶「……ひどい……」

憐「ふえ〜ん、ごめんなさ〜い!」 

  

 

 

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